東京農工大学科学博物館支援学生団体 musset 『みゅぜっとにゅ〜す』

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数学から科学へ

 こんにちは。サイエンスマルシェについての連載も、そろそろ終盤です。昨年12月のサイエンスマルシェは豪華(?)3本立てでした。そのうち、ここでは「見てわかる!カタチのふしぎ」について触れさせていただきます。

この企画で扱ったトピック・実験は、大きく分けて次の二つでした。
遠近法とそれを用いたトリックアートの仕組み
ワークシートのシェパード錯視や回廊錯視の図に透明なシートを当て、錯視を実感する実験。目の仕組みや光の経路と絡めた話。
「計測」の重要性
壁に貼った図形の各辺を測って大きさを比べる実験。正確に伝えるためには、漠然とした大きさなどを「量」として表すことが重要という話。

 アンケート結果によると、参加してくださった皆さんにはどちらのトピックも予想以上に楽しんでいただけたようです。低学年の子にもかなり楽しんでもらえたのが見ていて伝わりました。

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図1.当日の①の実験風景

 さて、この企画の最終目標は、「計測」という「数学的」概念を通して科学への導入を図ろうというものに設定しました。数学の、そして科学の初歩とはモノを「量」で表すことであると思います。たとえば、薬品の量を計算するにも力の計算をするにも、量として、ひいては「数」として物事を表せなくては意味がありません。数学を自然科学に含む辞書もあるほど、「科学(自然科学)」と「数学」には深い関係があります。
 ですが、こういった企画ではどうしても「科学」単体の面白さが取り上げられがちです。その方が面白い実験がしやすく、とっつきやすいからかもしれませんが……いわゆる「科学」は門外漢に近い身としては、数学から科学へ繋がるような実験ができないか模索したかったのです。そういった経緯から、私は今回、他の企画と比べても異質な本企画を発案しました。

 実際に企画を進行する上でも、本企画と他の企画とにはかなりの違いがありました。中でも最大の違いは、予備実験がほぼ不要だったことです。人の視覚を利用した実験ばかりでしたので、特別な装置や材料などの手配もほとんど必要ありません。その分の時間を、ワークシートやパワーポイントなどの資料作成に存分に費やすことができました。当日に実験が失敗するリスクも低く、実験自体が単純だったためか時間配分もしやすかったように思います。
 一方、問題点としては、他の2企画に比べて集客力が弱めでした。この点では可愛いうずらとカッコいい電磁石には勝てなかったようです。恐らく、企画のキャラが薄かったか、分かりにくかったということでしょう。また、「小学校低学年にも分かりやすく楽しく」を目指した結果、高学年には簡単過ぎたかもしれません。たとえば、ただ単に「小学生向け」と言うよりは、「小学校低学年向け」などの細かい区分(勿論ただの目安であり、それ以外の方も歓迎します)を設けた方が、SCも含め難易度設定がしやすいような気もします。その辺りは今後の課題となるかもしれません。

 今回の企画は先にも述べた通り、mussetで新しい試みを、という思考から成り立ったものでもあります。その一つがこうして一定の成功を収めたということは、今後更なる新しい試みが生まれることに繋がるのでは、と期待するところです。私自身、この他にもいくつか考えておりますので、お目にかけられる日を楽しみにしております。
 以上が、12月サイエンスマルシェ「見てわかる!カタチのふしぎ」の回顧録となります。私見に溢れた堅苦しい文章ですが、少しでも参考になれば幸いです。最後に、私の性急な企画案の持ち掛けを二つ返事で受け入れ、手伝ってくれたmusset3年の中村さんに感謝を。
 ここまで読んでくださってありがとうございます。musset3年の前田でした。